鹿島槍岳天狗尾根
2005年5月3日〜5日
OCUAC:佐々木、兵頭、吉村、山田
冬の鹿島槍を天狗尾根から登ろうと駒ヶ根山荘に集まったのはもう6〜7年も前で、まだ苑樹さんご健在の時だった。その折は、種々の事情で対象が西穂の西尾根に変わり、以降はそんな元気なことを言い出す者もなく時が経過していった。
5月山はここ2年間現役の新人合宿に付き合ってきているので、今年もと予定していたが、残念ながら新人が現れず、2、3回生の山行に加えてもらうのは遠慮してOBだけの山行を考えた。何処にするかは、西穂の時の兵頭君参加なら天狗尾根に異論が出るはずもなく、京都の吉村さんも来ると言うので、佐々木さんを加え去年の岳沢「こぶ尾根」のメンバー
が復活した形となった。男3名の平均年齢は60歳を超えており、去年とどちらがキツカッタか?面白かったか?以下の拙文にお目通し下さい。
5月3日 晴れ
駒ヶ根山荘4時20分発。岡谷辺りで北アルプスの雪稜がチラチラ見え出す。こちらからは常念の山頂の東側への広がりが突起に見えて、なかなか魅力的だ。豊科から大町への安曇野は出来たばかりの水田が広がり、銀白の後立山連峰と若葉とは何時ものように目を楽しませてくれる。途中スキー場方向へ道を間違え少し遅れて大谷原に着く。7時出発。アラ沢出合までに2箇所渡渉。先行は2パーティー5名。大谷原にはかなり集まっていたが、天狗尾根にはこの程度しか向かわず、先行者は足が速いので山は静寂に包まれていた。
天狗尾根取り付き9時半。 踏み跡も疎らな急斜面を小枝や木の根を掴みよじ登ってゆく。落ち葉で足が滑り、甚だしくエネルギーを消化する。小窓尾根や北鎌尾根の取り付きを思わせる。尾根上11時。この直前辺りから積雪面となる。尾根を暫くたどりクーロワールに取り付く。
午後の軟化した雪の急斜面を攀じ登るのはチョットしたコツが必要。右手のピッケルはシャフトの元まで埋まる状態で、足場を崩すことなく次の一歩を踏み出すには左手を上の踏み跡に旨く突っ込んで微妙なバランスを保たねばならない。斜度はきついがザイルを出すには抵抗があり、先頭の佐々木さん、ドンドン上ってゆくものだからこちらも遅れじとついてゆく間に後続との距離が開きすぎた。第二クーロワールの出口付近までこんな調子だったが、
さすがに最後のところは雪のステップが崩れればそのまま下まで行ってしまうので、通過したあと、ルート工作を施す。あれやこれやの内に時間が経過し、第二クーロワールを抜けて平らになった山稜の2100m地点に幕営する。(16時)
5月4日 晴れ
出発6時20分。テント地からは天狗の鼻への急斜面が構えているが、取り付きまでにやせ尾根を暫く上り下りする。登り斜面1個所でザイルを出す。天狗の鼻着7時50分。ここからは遠見尾根、後立主稜、鹿島北南峰、鹿島東尾根 更に爺や蓮華方面が見事に展望できる。今日も快晴だ。
八峰キレット小屋が指呼の間に見える。この山域には2回生の3月山で烏帽子〜白馬まで縦走した折の経験しかないが、その折3日間吹雪に閉じ込められ、乏しい食料を食い繋いだ事が想い出される。数えでも齢まだ63歳なのでチョット大げさだが、次の歌が口を衝く。
『歳たけて、また合い見んと思いきや、 命なりけり切れっ戸の小屋』
あの春山は烏帽子から船窪・蓮華を通過する辺りで豪雪に見舞われ日程が遅れ、辿り着いたキレット小屋では食料不足でと、相当な消耗を強いられた。今快晴とはいえ雪の天狗尾根から40年ぶりに間近にあの小屋を見たものだから、ついまね歌を作ってみた。西行さんにもお許しいただけるものと思う。
ここから延々500mの高度を登って行くが、途中小屋岩で2ピッチのザイル・ワークがあり、息がつける。更に登れば東尾根との合流点に達し、そのまま北峰へ詰め上がってゆく。北峰頂上直前の20m程は両側の切れた1m幅の雪稜で、緩傾斜だが気分の出る所だった。
そして剣の連峰が目に飛び込んでくる。(13時10分)
北峰から南峰へ、更に強風の中を冷池まで、核心部を越えてからのアルバイトに大汗をかいた。吉村さんここまでよく頑張った。(16時)
5月5日 晴れ
冷池発 6時30分。赤岩尾根の上部は雪が固く少々緊張するも、途中から西沢へ出て山田はもっぱらシリセードを交え駆け下る。大谷原着9時10分。
以上のように、連日快晴に恵まれ余裕を持って終えることが出来た。こぶ尾根との比較は、あちらはアタック形式で、それも困難なルートを選んだ上での日帰りの遊びだったので単純比較は出来ないけれど、ルートの難易度はこぶの方が上。但し天狗尾根は、降雪期にはルート工作に相当の時間を要すること確かで、5月だからテントを上にあげられたと思っている。対面に見えた東尾根の上部はかなり急峻な岩稜で、次はあちらにとの思いを抱いて下山した。
以上
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