初めての海外登山

アイランドピーク6189mとトレッキング

2007年10月 S48.工院 兵頭 渉

 憧れのヒマラヤトレッキングへのチャンスは突然やってきた。

出発までの2ヶ月半、累積獲得標高一万メートル、体重減量3kg、累積歩行距離500Kmを目標にトレーニングプログラムを作成、毎日が日曜日、楽しくケガ無く。

 関空・バンコック・カトマンズ・トリブバン国際空港へ。人、犬、ニワトリ、牛、リキシャ、バイク、自動車、自転車、ヒツジ、が地上でひしめき合い、埃舞い立つ旧市街の路地を抜けホテルへ。過去へタイムスリップしたような、映画の一シーンを観ているような錯覚を覚える。

 18人乗りのプロペラ機、操縦室のよく見えるシート、離陸、着陸の際は副操縦士が訓練をかねてスロットルを握っている!手に汗握る飛行一時間でルクラへ。

エベレスト街道は雨の中、

ナムチェの登りで大汗かいて、

エベレストは霧の彼方のビューホテル、

予定のルートは橋流出し坊主峠を越えてゆく。

雨と汗とで風邪をひき、高度順化に出遅れてダイアモックスの世話になる。

4500m越えゆくと、大きさ・形それぞれの可憐さ競うエーデルワイスの花の園。

いよいよ明日はアタックと、早めにシュラフに潜り込み、グぅ・スヵ・ピー・云々と隣近所を困らせて、夜中に何度もトイレして寝たと思えば朝3時、出発時間と起き出して身支度、腹支度大あわて。

 

 アイランドピークABC(5400m)から山頂(6189m)まで標高差800m、登りは時間あたり150m〜200m稼げるとして4時間〜5時間、下りは3時間、7〜8時間の予定で3時過ぎにヘッドランプの明かりを頼りに登行開始。

 岩の小道を辿り、大きなガリーをトラバースし、岩稜を回り込みながら傾斜の強い稜線をユックリと登ってゆく。傾斜が緩みテラス状のところで夜が白みはじめる。先はスノーリッジが雪原に続いている、これからはアイゼンの世界、息を整えながらアイゼンを装着する。氷河の感触を確かめながら300m先を行く仲間との距離をこれ以上広がらないよう少しピッチをあげてみるが無理は禁物だ。

 氷河に積もった新雪は意外と柔らかく、傾斜の緩い氷河雪原を大きく右に曲がると雪面のスカイラインに浮かぶ大きな岩の三角錐が見えてくる、マカルー(8475m)だ。

ここからは西面が見えるため表情は霞んでいる。朝6時、標高6000mの雪原は静かに開け始めた。目の前には頂上稜線から降りてくる傾斜60度、登行距離150mの雪壁が左右300mに広がっている。昨日シェルパがセットしたフィックスロープが稜線から真っ直ぐ下りている。気温は低いが、強い日射と照り返しで寒さは感じない。

 フィックスにユマールをセットして雪壁を登る。見た目以上の傾斜に足下を確認しながらキックステップで足場を固めるが、足が思うように上がらない。ステップが大きすぎる!先行者への文句が頭の中を駆け回る。汗はかいていない、息も上がっていない、動悸も激しくない、だけど上に登るのにとても時間がかかる。動作がノロノロし手足に力が入らない。

 周囲の山に朝日が差し始める、神々しいほどに輝いている。思い返してみると、立ち止まって写真を撮るという事は考えなかったようだ。頭の回転もノロノロしていたのだろう。雪壁を詰めるとローツエ(8516m)の南壁が視界一杯に広がる。山頂までは両側がすっぱり切れたスノーリッジをフィックスロープにユマールをセットして雲一つない紺碧の空に向かって一歩一歩登ってゆく。

 午前7時20分山頂6189mに立つ。

ローツエ、ローツエシャール、は近すぎて見上げる先に山頂はるか。少し遠くにマカルーがその存在感あふれる姿を見せてくれる。シェルパ達はカトマンズの家族と携帯電話が繋がり楽しそうに話をしている。山頂で写真を撮り、景色を眺め周囲の山々の名前を確かめたり、楽しい一時を過ごす。

 下りは、エイト環を使ってアップザイレンでスピーディーに下る、が、フィックスロープが細いため抵抗が少なくオーバースピード気味で有った。もう少し小振りのエイト環の使用など今後工夫が必要である。ABCで昼食を済ませBCまで下る。薬を飲みながらではあるが4000m越え、6000m越えが出来たことに満足感を覚えた。

エベレスト街道トレッキングに続きランタン渓谷トレッキングを終えて10月末に帰国した。出発の時の暑さが嘘のようで、秋色に染まりはじめる風景を見て35日間の旅の長さを実感した。

 今回のトレッキングの個人的目的の一つに高度順化が可能か否かを確認することが有ったが、6000mから7000m付近までは何とかなるとの見通しがついた。

 それを踏まえて、この様なトレッキングピークだけでなく、自分の登山スタイルとレベルに応じたヒマラヤの峰峰にこれから通う事になりそうだ。

<左:ローツェをバックにアイランドピーク山頂にて>

右:朝日に輝くアマダブラム>

<左:チュクンにて>

右:朝日に輝くチョーオユー、ペリチェから>

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