モンブラン(4807m)登頂
40卒 上田 忠士
今年7月佐々木君達とフランス、スイスに出かけたが、その目的の第一はモンブラン登頂であった。シャモニー滞在中案内所で好天続きを確認して7月18日一番のバスでレシューズに向かった。
ロープウエーと登山電車で終点の登山口ニ・デーグル駅到着9:00.ここは標高2360m。電車から降りてきた多数の登山者と歩き始めた。開けた斜面、明るい谷を登るが樹木は全くない。落石の多い谷を急いでトラバース、雪渓を渡るとテート・ルース小屋があり昼食休憩。
ここから見上げる急な岩稜を苦労して登り切ると今夜の宿泊所「グーテ小屋」であった。標高3820m、1500mの登りであった。小屋は数年前に拡張工事がなされて別棟が完成されており、そこに入り休憩する。佐々木君は10年ぐらい前にここまでは来たことがある。次々と小屋に登山者が入ってくる。夕食は18:00.きわめて簡単な食事である。日本人はわれわれ二人と日本人ガイドに案内された日本人登山者一人のみだ。食堂に総勢50人ぐらいいただろうか、がやがやと騒がしい。明日に備えて7:30就寝。
7月19日、起床1:20、朝食2:00. 配膳されるものと思いテーブルに座って待っていたが来ない。セルフサービスになっているのだ。やや遅れた。他パーテイのガイドが登山客の装備をチェックしている。なんとなくあわただしい雰囲気だ。準備の出来たパーテイから次々に出発して行く。2〜3人パーテイが多いようだ。
われわれも2:45ヘッドライトを付け、やや緊張した面持ちでザイルを結び合って出発した。雪は硬くアイゼンが心地よく効く。気温は氷点下になっているだろう。先行パーテイのヘッドライトの灯りが揺れている。上空は満天の星で好天が約束されているようで元気が出る。雪の中ではあるが、トレースは完全についておりただひたすらそれを辿る。見えるのは足元2〜3m先だけだ。われわれ64歳と65歳の者にとっては最後の登頂チャンスになるだろうと思うと登攀意欲が高揚し、休みもなく速いピッチで進む。なだらかな雪稜、広い雪面が続くが、このあたりは特に危険なところはなさそうである。
東の空がやや明るくなって来たころ尾根を乗り越える大雪原に立つ。ここからはるか先にモンブランへの雪稜が大きく見える。アップ、ダウンがかなりありそうである。約100m雪面を下り、下り切ったところでヘッドライトをザックに納める。ここからが本格的な登りの開始である。左上方に大きなヴァロ避難小屋が見える。30分ぐらいの登りで小屋への広い雪稜の分岐に到達。このころ真っ赤な太陽が遠く、雲海から輝き始めた。感動的な情景だ。ここから左側が大きく切れた急な雪面、アイゼンをきしませ、ピッケルで安定を保ちながら登る。このあたりがルート案内書の写真に出るところであろう。登ったり下ったりを繰り返す。登り切ったところから左右に切れ落ちて高度感のあるナイフリッジが200m〜300m続き、慎重に進む。
ナイフリッジを通過50mぐらい緩やかな雪稜を登りきると頂上であった6:45. そこは名前の通り白い雪におおわれ広く20人ぐらい居れそうである。グーテ小屋から4時間、ノンストップの行動であった。先行したパーテイが歓喜の声をあげている。ここはヨーロッパの最高地点、360度何も遮るものはない。モンテロ-ザ、マッターホルンなどが遠望され、眼下にはシャモニーの町が見渡せる。しばらく登頂の歓びを分かち合う。雄大な山並みを眼底に焼付け、写真に収め、もう再びこの地を踏むことはないだろうと後髪を引かれる思いで7:10下山にかかった。
ナイフリッジは登って来るパーテイとすれ違うたびに注意して体を避ける。急な斜面を下り終わるとあとは好天の中をルンルン気分で下る。あれだけいたパーテイはどこへ行ったのか、この大雪原を今歩いているのはわれわれ二人だけである。気温が上昇し雪が緩みアイゼンに雪が付着する。グーテ小屋着9:20. 早い方の下山であった。
予定通り念願のモンブランにガイドなしで登頂できたのは、風もほとんどなく好天に恵まれたからであろうが、良きパートナーの存在があったからこそと感謝の気持ちで一杯である。グーテ小屋でアイゼン、ハーネスを外し、少し休憩して高度差600mぐらいの急な岩稜を慎重に下った。ここは悪天候や雪があれば苦労するであろう。あとは達成の満足感を味わいながらだらだらと長い、長い道を歩くだけであった。
電車乗り場ニ・デーグル駅到着13:45.頂上からの高度差2500m、距離25km。休憩を含み11時間の行動であった。シャモニーに帰り、岡本先輩、家内らとワインで祝福の乾杯。
モンブラン登頂後、サースフエーのアラリンホルン(4027m)にも登り、それぞれ帰国の途についた。
登頂者:佐々木惣四郎
上田 忠士
登山日:2006年 7月18,19日
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