ツールドモンブランを歩く

                   上田 忠士

 

4年前に佐々木君とモンブランに登頂したが、その山容を違った角度から見たいと思い、家内と二人で一周コース「ツールドモンブラン」TMBを歩いた。このTMBはフランス、イタリア、スイス三カ国にまたがり、峠や谷を越えて歩く全長166kmのトレールである。一部にバリエーションルートもあるが道は整備されており、一般的には10日間ぐらいで踏破できるようだ。景観は氷河の覆われた針峰群、大きく広いU字谷と飽きることはない。私たちは一部バスを利用したが、130kmを踏破、獲得高度累計は7600m、11日間を要した。

 

1日目: 晴れ

シャモニーからバスでレズーシュへ。ここでパンなどを買い、ロープウエイでベルヴューへ。ここからトレッキング開始。左手にモンブランへの登路、グーテ小屋への急峻な登りの岩稜がすばらしい。トリコ峠を越えて、氷河に覆われたミアージ山を見ながら600m下ってさらに200m登って今夜の宿、トルック小屋に着いた。泊まり客は私たちとフランス人の4人のみ。

 

2日目: 晴れ

パンとコーヒーだけの朝食をすませ730出発。コンタミンへ600m下り、モンジョ谷に沿った道を登る。幅は広く緩やかである。バルムの小屋でランチ。ここから本格的な登山道になる。ボンノム峠を越え、さらにクロウボンノム峠まで来ると、大きなボンノム小屋が眼下に見えた。小屋着1530。今日は1200mの登り。小屋は5060人で満員であった。

 

3日目: 曇り、雨

あやしい空模様の中、雨具を着て出発。フール峠まで1時間弱の登り。私たち2人のみだ。この峠は2665TMBで最高地点。峠には雪があるがアイゼンを装着するほどのことはない。この峠越えはバリエーションルートになっているが、夏の終わりなら問題ない。かなりの雨の中をグラシエまで900m下る。この間23のパーテイに会っただけ。モッテ小屋着1140。今日は短い行動計画を立てていて助かった。

 

4日目: 曇り、ガス

夜中は強い雨と風であったが、雨の止むのを待って840出発。650m登ってイタリアとの国境セイニョー峠(2516m)に到着。峠はガスの中、視界がきかない。私たち二人のみである。5分ぐらいいてイタリア側にベニーの谷を下った。途中からやや明るくなってエリザベッタ小屋に到着1200。今夜もワインを飲み夕食をとる。

 

5日目: 晴れ

ベニーの谷を下り、コンバル湿原を約1時間歩く。ここから右手の尾根に取り付き、屹立したモンブラン南側を見ながらゆっくり歩く。天気もよく最高の景観である。途中モンブランを見ながらエリザベッタ小屋で作ってもらった弁当でランチ。シュクルーイ峠を経てクールマイヨールまで歩いて下り、ホテル着1450。ここは個室。夕食は外で摂りシャワーを浴びてぐっすり眠る。

 

6日目: 晴れ

8:20発のバスでフェレの谷のアルヌーヴァまで行きトレッキング開始。エレナ小屋まで登り1時間。ここから500m登ってフェレ峠(2537m)に到着。ここはイタリアとスイスの国境。天気はよくマッターホルン、モンテローザがよく見える。30分ぐらい景色を楽しみフェレの谷をスイス側に下る。草原の中でランチ。途中の休憩所でミルクを飲み、フーリまで下る。左手に三国境の白い岩峰モンドランが聳えている。フーリ到着1610。今日は750m登り、950mの下りであった。

 

7日目: 晴れ

今日は山岳コースでなく、フェレ谷に沿って山の中腹を歩くコースで15km。出発900。谷の左岸、右岸と森の中道を歩く。傾斜も緩く気持ちの良いウォーキングだ。途中イサット部落のレストランでランチ。ここから400m登って高原のシャンペ湖到着1540。湖畔の宿に落ち着く。今夜の泊まり客7人。ここはスイスフランの世界である。

 

8日目: 晴れ 

シャンペダンバから森林の中の登りにかかる。小さな沢を4本越えると前が開け、ボビーヌである。マルテーニを見下ろす草原の中でランチ。いつもテルモスの湯でコーヒーを作る。ここから750m下ってフォルクラ峠経由トリアンに到着1600。夕食700。いつもながら就寝83012人のドーミトリルームに8人寝る。2食付57スイスフラン(約4800円)

 

9日目: 晴れ

出発820。ウルトラマラソンの標識に従ってバルムの峠方面の右側の山腹から尾根への道を取る。TMBの標識はなく、ここはTMBのバリエーションルートである。1000m登り1140 バルムの峠の上方100mのコルに出る。モンブランの美しい姿が目に飛び込んできた。ここはスイス、フランスの国境。しばらく景色を楽しみルツールまで800m下り、フランス山岳会の山荘に到着1530

 

10日目: 晴れ

同宿したフランス人登山家は6時ごろ出かけた。私たちは630起床。出発830。モンロックよりTMBを登り始めた。急な梯子56箇所をすぎシェイズリーでランチ。家内が相当疲れてきたが、何とか目的のラックブランまで登った。1400到着。ここは池を隔ててモンブラン、ヴェルト針峰、グランド・ジョラスなどの山容を望む最高の展望台だ。疲れがいっぺんに吹っ飛ぶ。1時間ぐらい休憩し、500m下って1630フレジュールへ着いた。今夜は10泊目、TMB最後の夜である。頭上に満点の星、眼下にシャモニーの明かりが見える。

 

11日目: 高曇り

今日はTMB最後の日。シャモニーに下る日である。出発は泊まり客で最も遅い830。天気はモンブラン上空にガスがかかっている程度で悪くない。 多くのトレッカーはレズーシュまで歩きTMB完全踏破を目指す。私たちはシャモニー谷を隔てたモンブラン山塊を見ながら、アップ、ダウンを繰り返しプランプラへ到着1050。しばらく景色を楽しみ最後の歩き、シャモニーまでの1000mの下りにかかった。シャモニー到着1400。ボッソン氷河下のシャモニーYH到着15001011日のツールドモンブランが終わった。夜はワインで乾杯!

 

追 記

   私たちは825日出発したが、やや遅いシーズン。天候は安定、トレッカーは多くない。

   朝夕は肌寒いが日中は半ズボン、Tシャツの日もあった。ボンノムの小屋では私たちが泊まった翌日に降雪があったようだ。

   小屋は、さすがにヨーロッパ、ドミトリーが殆どであるが、ベッドか十分幅のある寝所が確保されている。二食付で40ユーロ前後である。

   小屋は立派な建物で大きく、収容人数も4060人ぐらいだが、予約はした方がよさそう。満員で断られたトレッカーもいた。トイレは水洗、シャワー設備のある小屋が殆ど。

   私たちは10泊したが、この間、東洋人やイスラム系の姿は全く見なかった。

   トレッカー、小屋の従業員の言葉はすべてフランス語のようで英語の通じない小屋もあった。

      

20109月記   

以 上

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